やまなしメディア芸術アワードポータルサイト

K-01

Unreal Pareidolia -shadows-

Scott Allen

あるものを見たときに、本来そこに存在しないにもかかわらず普段からよく知ったパターンを心に思い浮かべるパレイドリアという現象があります。本作品は、人が日用品や玩具などを何かに見立てて作った影絵に、AIを使用して別のものに見立てられ生成された画像とその説明が重なります。人の見立てにAIの見立てが重なることで、個々に起こる認知的な部分に影響し、想像力を引き出すような存在として機能します。

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像楽家、生像作家。2016年情報科学芸術大学院大学（IAMAS）修了。人の想像力と視覚装置やテクノロジーの関係に着目し、投影装置の仕組みに物理的に介入し変調したり、日用品に手を加えることで像を作るスタイルでインスタレーション制作・パフォーマンス活動を行なう。また、深層学習を用いた作品制作やAIと協奏するライブコーディングユニットAi.stepとしてもライブ活動を行なう。

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山形一生: わたしたちは車や木の模様、そしてコンセントに至るまで、様々な対象を顔と認識する力があります。これは他の生物にも広く備わっているシミュラクラ現象と呼ばれるものです。AIの生命／非生命という陳腐な議論に収斂するのではなく、どう見えているのだろう？という実直な示唆を与えてくれる作品です。
吉開菜央: AIを使用した作品は多く応募されていましたが、この作品は、AIを使って作家の望む世界観や結果を導き出しているのではなく、AIによるリアクションの、純粋な面白さを引き出しているように感じました。

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K-02

春　ハイレモンの観察

亀井里咲 Risa Kamei

撮影：浜崎祥多

気づけばもう大学４年生で、あと少しで大学を卒業する。友人と残された時間で思い出をたくさん作ろうと、2023年の春休みはいろいろな場所へ出かけた。忘れたくない良い思い出になったものの、記憶は時が経てば経つほど変化していく。
本作品では、旅のお供として食べたハイレモンの空き箱にモーターで動きを与え、生き物として飼育する。記憶に新たな肉体を与え、変化を成長として見守る。

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多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース在籍。2001年愛知県生まれ。失いたくない記憶や透明化された内面をテーマに、洋服やお菓子のゴミなどの日用品を、心があるかのように動かすキネティック作品を主に制作している。これまでMaker Fair Tokyo2022、2023などに出展。

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小坂井玲: 旅行先から日常へと持ち帰られる「おみやげ」は、記憶を媒介し、懐古を促す装置として機能する。本作品では、記憶の変化を生物の成長になぞらえ、生物のような特性を付与し、鑑賞者に提示している。審査対象の映像を見る限り、シンプルな造作ながら、生物の動きが柔らかく、細やかに構築されており、愛らしさが感じられる。作者と記憶を共有していないにも関わらず、その記憶の質感に目で触れるような鑑賞体験に、素朴な驚きを感じました。
山形一生: 電柱の近くに白い猫がいる！かわいい！…なんだビニール袋か…。という経験はもはや漫画のギャグシーンに用いられるほどに流通したわたしたちの経験といえます。特定の利用プロセスを終え、処分される未来を待つ工業製品に対して、愛おしさや可愛さを覚えてしまうのは、私たちがその製品にまつわる経験を通してその存在を見るという、歪んだ個人の世界を投影しているからです。それが愛おしいということなのだと気付かされます。

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K-03

Observing Variation / 差異の観測

森田明日香 Asuka Morita

一様に見えるスライスロースハムの差異から、日常生活の中の「遊び」を捉えた作品です。精密に作られた工業製品には隙がなく、同じ色やカタチをしているため「遊び」がないようにみえます。しかしその１つ１つをよく観察すると、肌理に微かな差異があることに気づきます。それは、厳密な工業製品の世界にも「遊び」があることを教えてくれます。本作では、１パック４枚入りというスライスロースハムの販売形態を１つの単位として対比させ、映像・音響・空間を構成しました。

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日常生活の中で、同様の色、同様のカタチをした同一に見えるモノが数多く存在している。特に工業製品は精密に作られており、そのため隙がなく遊びがないようにみえることがある。しかし、その１つ１つに触れてよく観察すると、肌理に微かな違いや特徴があることに気づく。それは個々それぞれに固有の特徴が存在し、同一にみえても本質的には異なる似て非なるモノであることを教えてくれる。このように厳密な（工業製品の）世界にも遊びが存在しており、一見地味に見えるが、ほのかな彩りを生む微かな差異に大きな関心を抱いている。

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荒牧悠: ハムを食べようとして、スーパーで買ってきたスライスハムのビニールをあけ、一枚一枚めくりとる。その時、まだハムはハムでしかない。しかし、観測の対象になった時、“一枚の”ハムになる。めくりあがり方にばらつきがないだとか、まるで月みたいだとか、改めてそのものを見ようとすることで、見えていなかった見方がまだまだあると気づかされた。個として見る眼差しを取り戻すような活動だと思った。
小坂井玲: タイポロジー・フォトグラフィ的な手法で、逆説的に対象の差異を提示する作品。手法としては、記録的、客観的な要素が強い一方で、その手法をどのような対象に向けるか、また、最終的に作品として、細部も含め、どのように鑑賞者に提示するかという点で、表現者の立ち位置が探られるように思う。
どのように「生物の痕跡」が顕在化しうるのか、インスタレーションを鑑賞しながら再考してみたいと感じます。

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K-04

I stitch my skin to the ground

宇佐美奈緒 Nao Usami

本作品は、2つのビデオゲームで構成されるシリーズ。傷つけられた皮膚を脱皮するように変化することを望み、新しい身体を創造する物語。

《Replay over and over》 2023
性暴力によって自身の身体を物体にさせられた話をもとにした作品。キャラクターは危害を加えられると、操作が無効になり動けなくなる。プレイヤーの意思（コントローラーの操作）とキャラクターの行動の不一致は、“Tonic Immobility”（強直性不動反応）という性的虐待における実際の身体の反応を表現している。

《Ambiguous Lucy》2021
新しい身体を探すために機械や植物、石と結合するための旅を描く作品。「ルーシー」とは、アウストラロピテクスの最初期と推定される318万年前の女性の化石人骨につけられた名前を指す。

2020年東京藝術大学映像研究科メディア映像専攻卒業。主な展覧会に、「Digital Art Festival Taipei 2023」（国立台湾科学教育館, 台湾）、「TOKAS-Emerging 2023」（トーキョーアーツアンドスペース本郷）、「昌原国際彫刻ビエンナーレ2022」（韓国、オンライン）、「Open Studios」（GlogauAIR、ドイツ、オンライン）

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高尾俊介: ゲーム映像を通じてプレーヤーとして性暴力の体験を再現することで、性別を越えた加害性への恐怖感、身体の喪失感とともに強烈な嫌悪感を覚えた。それらは総じてネガティブな感覚でありながら、本作品を同時代的なものとして展示する意義があると感じた。
吉開菜央: ゲームというと、主人公が襲ってくる敵を倒すなど、あくまでプレイヤーが主体的に世界に働きかけるものを想像しますが、この作品は徹底して自分の主体性を奪われる体験に重きが置かれているように感じました。CGの質感がかえってリアルな感覚を想起させ、この作品でしか描けない不快感があり、ゲームではなく現実に起きていることを基にしているのだと、何度も繰り返しそのことを思いました。

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K-05

Solarisation / 遭難｜Getting Lost

大岩雄典 Euske Oiwa

「Solarisation」は、ある二つのテクストの異同です。
ひとつは、ポーランド語の原著を定本に訳されたスタニスワフ・レム『ソラリス』（2004、国書刊行会、沼野充義訳）、もうひとつは、ロシア語版を主な定本に〈重訳〉したスタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』（1977、早川書房、文庫版、飯田規和訳）です。前者に存在し後者には存在しない部分のうちごく一部を抜粋しています。

本作は「遭難｜Getting Lost」という、2020年5月に公開された、ウェブ上の“展示室”に展示されています。

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イラスト：山本悠

美術家。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程。インスタレーション・アートはどのように芸術か、という問いからはじめて、行為や言語、フィクションの「空間」や「能力」を主題に、たとえば隔離・予防における政治的な時空間の分節から、展示制度や教育におけるエージェンシー、ホラー・笑いの演劇性まで、一貫した関心を変奏しながら作品制作、研究、執筆、出演を継続的におこなう。展覧会に「渦中のP」（十和田市現代美術館、2022）「バカンス」（トーキョーアーツアンドスペース本郷、2020）など。

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荒牧悠: どこかわからないところに放り出されて、心許ないあたり一面真っ白い世界（画面）の中で、スクロールすると現れる言葉を手掛かりに先へ進んでいけるか、と思ったのも束の間、手元を確認することを阻むように言葉が点滅（視界が眩む）し、我々はどこにも辿り着けず、助けを呼ぶこともできない。手掛かりにした言葉たちは、検閲される恐れから削除された小説の一部とある。意味と形式が混ざり合うことで生まれる空間に入り込んだような、シンプルで強烈な体験だった。
小坂井玲: 画面を下へスクロールしてテキストを読み進めようとしてもうまく行かず、行きつ戻りつするうちに、いつしか、茫漠とした空間が立ち現れ、その中で途方に暮れていることに気づく。ウェブブラウザ、テキストといった簡潔な要素で空間性を強く体感させ、不安や恐怖といった感情を喚起するのみならず、翻訳、検閲、権力など、多様な解釈を促す、鮮やかな作品だと感じます。

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H-01

Hyle(s)

大原崇嘉 Takayoshi Ohara

まなざしを送り、風景がそれに応える。人とモノ（物質）との相互の関係性の中に生じるこのような実在性や一回性は、そのモノに付されたイメージに対しても拡張させることは可能でしょうか。近年、メディアが透明性を増していく一方で、常に触れ、運ぶことでそのモノとしての側面が強調されるパラドキシカルな状況において、このような課題は同時代的なものとして明瞭に浮かび上がっているように感じます。
本作は、動く「モノ」と「イメージ」の同期／非同期、そしてそこに向けられるまなざしとの関係性を通して、このような意識の前景化を試みています。

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Photo: Shunta Inaguchi

1986年神奈川県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像学科メディア映像専攻修了。色彩や構成、人間の奥行き知覚の考察をベースとした視覚表現などを行う。2021年文化庁メディア芸術祭〈アート部門審査委員会推薦作品〉、2014年第67回カンヌ国際映画祭〈短編コンペティション部門ノミネート〉、2012年文化庁メディア芸術祭〈エンターテインメント部門審査委員会推薦作品〉など。

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荒牧悠: エレベーターに乗っている時の、身体と心臓にズレが起きるような感覚が蘇る。岩にも心臓があったら、ズレると思う。それだけ落下運動から得る身体の感触が強い。
風景と岩とカメラのレイヤー関係、カメラつまり画面は落下と上昇を繰り返す。岩があることで、遠くにみる景色との関係を見ながら、物性の裏切りによって見る人の身体性がより強く揺らぐことが期待できておもしろい。
高尾俊介: ディスプレイが運動する中で、次第に時間や投影されるイメージ、運動そのものにズレが生じていく。質量を持ったディスプレイが情感なく駆動する様子とディスプレイに映るデジタルイメージの軽薄さ。まるで人間不在でも存在し続けるような、冷徹な対比を心地よく感じた。

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H-02

Round and Round and Round

小田陽菜乃 Hinano Oda

生活家電は家事を代行する。例えば、電子レンジ。
ターンテーブル式の電子レンジは、調理中であることを強調させ料理がだんだん仕上がっていく時のような期待感を持たせることと、加熱の効率化という２つの理由から普及していった。暖色の光も、調理を演出するための照明である。
ここでは電子レンジが3台、何かを入れて回り続けている。電子レンジの窓の奥でループ再生されている映像は、事前に仮想の状況を撮影したものであり、家電と組み合わせることで、現実ではありえない光景を映し出す。

撮影：齋藤千春

1997年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻在籍。何でもない風景にズレを起こすことで、日常生活に潜む映像性を浮き出させる試みをしている。

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荒牧悠: 回転する動作で繋がれた空間にある家電は、回す相手を入れ替えて自身の使命を全うするために回り続けている。じゃんけんのあいこ状態で、噛み合わないもどかしい状況を想う。ハッとするその入れ替えはそれぞれの道具の有用性を無効にすると同時に、画面の中で起こさせることで、家電はシミュレーションであるとする側面も提示する。多重な混乱が静かに起きていているところが興味深かった。
山形一生: 歴史を振り返っても、周りを見渡しても、回転するものばかりです。とある日本の著名なメディアアートの作家も、最初の3D作品は回転したものだった、と言葉を残しています。どこからか、地球も回っているから…という陳腐な隠喩が聞こえてきそうです。ですが事実として（その回転している物体がどんなものであれ）、わたしたちは回転しているものを見続けてしまいます。

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H-03

Body Memory

ノガミカツキ Katsuki Nogami

身体の記憶を再生するVR作品。現代社会で身体の役割はスマホを扱う指先まで縮小されている。VR後に自分の身体に戻る時の身体離れの違和感、記憶が短期間で消える人は身体で記憶する事、モーリス・メルロ＝ポンティの「身体は世界を経験するための一般的な媒体である」という考え等に触発され、自分という存在において一番大事な部分は何か、魂が宿る場所を考えた時に、身体の記憶が重要だと考えた。私個人の日々の身体を3Dスキャンで、またその動きをモーションキャプチャで記録し、身体が単なる操作のためのインターフェースではなく、世界を体験する基盤としてアイデンティティを形成するものとしての重要性を探る。そして、記憶が存在を主観から定義する重要なものとして日記のテキストを合成音声で独白する事で、過去の自分の身体のアバターに記憶を物語る。

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新潟県長岡市出身。学生の頃から海外ビエンナーレ等に出展を行い17カ国での展示・上映経験がある。アルスエレクトロニカや文化庁メディア芸術祭、ifva香港を始めとした受賞多数にBehind the Mac、Forbes U30、映像作家100人、フィンランドサウナアンバサダーに選出。VICEやWIRED、装苑などのメディアで作家特集が掲載。自分の肌を数年間スキャンして記録、自然物に印刷し続けている。パブリックアートが大阪と千葉に恒久設置。

小坂井玲: 皮膚の様子まで写しとられた身体の3Dスキャン、モーションキャプチャーで記録された動きの再生、日記の合成音声による読み上げ、主観的な視点のカメラの存在といった要素で構成される。映像作品としてまとめられていますが、作家が冒頭で語る、個人の歴史、アイデンティティ、記憶といった問題の探求という意図からすると、エスキース的な段階のように感じられます。探求のフラグメントとして、面白さがあるように感じます。
吉開菜央: 世界のあらゆることに意味を持たせない、ことを徹底している作品に見えました。合成音声で読み上げられるテキストから、それでもふと作家の言葉の手癖のようなものが浮き立つ瞬間があり、内容そのものよりも、心身の感覚に引っ掛かるのは、そういう規格からこぼれ落ちるノイズなのかもしれないと思いました。

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H-04

Fire Server

高見澤峻介 Shunsuke Takamizawa

Photo: Naoki Takehisa

本装置はwebサーバーです。熱の温度差によって発電される仕組みを電源としているので、蝋燭に火がついている時、冷却が十分な時にのみアクセスが可能なサーバーです。蝋燭が点灯中、お手持ちの端末で作品の前に書かれたURLにアクセスしてみてください。また、いつか思い出して再アクセスしてみてください。その時、もし火が灯っているならば、ここに全世界からアクセス可能です。

「火」や「光」といったプリミティブなメディアを通して、現代の視覚環境や通信技術の社会的・技術的基盤を巡る作品を制作している。主な展覧会に、グループ展「沈黙のカテゴリー｜Silent Category」（クリエイティブセンター大阪、2021）、個展「Screening Organon」（CASHI、東京、2020）、個展「Screening Organon」（四谷未確認スタジオ、東京、2019）等。

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伊村靖子: ろうそくの炎で発電し、インターネットサーバーを稼働させ、ウェブカメラの映像を配信するメカニズムは、DIY的な装置と相まって素朴な驚きを与える。カメラ越しに誰かと繋がることの原初的な意味を追想させるだけでなく、エネルギーへの想像力という点で、ヨーゼフ・ボイスの《カプリ・バッテリー》（1985）が想起され、広がりを感じさせる。
高尾俊介: 小さな火力発電によって稼働するインターネットサーバー、そこにアクセスしてウェブカムからのストリーミング映像を観る経験は、映像メディアが本来もつはずの原初的なリアリティを想起させる。作品の高い自律性は言うまでもなく、高度に発達した情報社会に対する鋭い批評性を有している。

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H-05

音楽劇「声のゆくえ」

大久保雅基 Motoki Ohkubo

撮影：佐藤陽友

声や言葉、そしてそれにテクノロジーを加えて表出される音、聴くこと、文字について考察する音楽劇。音楽は客席を囲むように並べられた６丁のヴァイオリンからは、無人で演奏されているような音が聞こえてくる。アルゴリズム生成された音楽や人工知能によって声がヴァイオリンの音色に変換された音が聞こえてくる。登場人物の言葉は声から言葉、そして音へと変容していき自己のアイデンティティを問うていく。

1988年宮城県仙台市出身。コンピュータ音楽の作曲家。プログラミングや音響機器等のテクノロジーによって音楽のあり方を問う。名古屋芸術大学芸術学科芸術学部デザイン領域、愛知淑徳大学人間情報学部、相愛大学非常勤講師。洗足学園音楽大学音楽・音響デザインコースを成績優秀者として卒業。情報科学芸術大学院大学メディア表現研究科修士課程修了。先端芸術音楽創作学会、日本電子音楽協会、日本AI音楽学会会員。

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荒牧悠: 発せられる声、言葉について、哲学的な思索が軽やかな対話・音楽劇によって進んでいく。
この場で現れていないのは内的なおしゃべりだけなのではないだろうか。声に聞こえるように調整されたヴァイオリンの音は、意味の抜かれた声と言えそうだが、声とは。そもそも意味とは。＜わたし＞の所在にもつながっていく。劇の時間と一緒に考えが巡ることが気持ちよかった。
高尾俊介: 音楽劇という古典的な形式を採用しつつ、劇中ではネットスラングや若者言葉を取り入れて親しみやすい話法を用いている。楽器の音色を抽象化するプロセスを通じて、「声」というメディアが徐々に独自の特性を持ち、変容していく様が描かれる。テクノロジーの援用が巧みで、気づけばその魅力に引き込まれた。

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H-06

愛情★ぼし

李姿婷（リシテイ） LEEtzuting

このアニメーションは、人間関係において何の反応も得られない気持ちを表現しています。だから、星が無機質なものに恋することで、反応がないことの無力さを伝えようとしました。大切な人に好意を寄せたとき、その人が何も返してくれないと、自分を全て受け入れてくれているように勘違いしてしまう。でも実際は、その人はあなたのことを何とも思っていない。強い思いを抱いても、愛情を返してくれない無力感が生まれます。

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2024年現在、東京藝術大学大学院在籍。台湾台東生まれ。学部はデザインを専攻し、現在は平面アニメーションを研究している。《愛情★ぼし》は初めての平面アニメーションである。人の繊細的な感情をテーマに制作している。

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伊村靖子: ディスコミュニケーションをテーマとした、ファンタジー。全体を貫くのは、星から海への片思いの物語であるが、有史以前からの時間軸の中に、多言語間や家族内の意思疎通など、現在の身近な問題が散りばめられている点が魅力的である。過去のアニメーション作品や漫画からの引用を思わせる折衷的な表現が、効果的に取り入れられている。
吉開菜央: 画面を絵で埋め尽くすのではなく、あえて余白を残すことで、言葉で語られる物語とはまた違う語り口が生まれていることに惹かれました。手を動かして描く人がいるのだという、作者の存在も強く感じられます。執着を手放せずに思い悩む人間という普遍的なテーマを感じましたが、絵を描くことで人が癒されることがあるという内容には、物語の構造からも誠実な説得力を感じました。

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H-07

water ripples

studio muku studio muku

半導体の集積率が年々微細化され、それに伴いコンピュータやスマートフォンは毎年のように機能向上を謳い新しいモデルが発売される。技術発展に淘汰された電子デバイスのその多くは電子廃棄物となる。時代の流れからこぼれ落ちたかつてのPCファンに湖の水面を投影し表層的に見えている世界、深層的に存在する現実、その表裏によって成り立っている社会構造、人間の欲求によって生まれたレイヤー、そこに干渉する自らを波紋として表現する。本作では、河口湖のフィルードワークにより収集されたデータを使用している。

京都のシェアハウスで出会った堀川（プログラマー）、石綿（デザインエンジニア）、樋口（デザイナー）によるスタジオ。日々最新の技術を享受する一方、デジタルへの過度な流れに対する違和感を覚える。私たちはリアルな世界に寄り添い、その時代からこぼれ落ちたテクノロジーを用いながら、普遍の心地よさを持つ作品を制作する。スペック至上主義、変わりゆく地球環境、そういった変革の時代を生きる当事者として、テクノロジーと自然のバランスを再構築する。

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伊村靖子: コンピュータ・ファンの回転の制御と配置によって生じる音やその揺らぎによって、鑑賞者の想像力を刺激する作品である。技術的な発展に伴う環境問題や構造的不平等の告発というグローバルな視座に加え、今回は、山梨の湖や大地の自然に取材する試みということで、サイトスペシフィックな展開から何が見えるのかを期待している。
山形一生: わたしたちが屋内でなにかを録音し、その成果物を聴いたのなら、空調や機材のファン音という「ノイズ」で溢れていることに初めて気付かされます。本作は、そのような日常において「ノイズ」としてマスキングされるファンによって構成されています。本作に付随したテキストで語られるエコロジー問題やテキストの態度に私は疑問を覚えるものの、それは実際の展示鑑賞によって一蹴されると信じています。

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H-08/F-07

防災無線通信

永田風薫 Fuka Nagata

ホーンスピーカー、モーターサイレンからなる行政防災無線を模した音響装置によって上演される音楽作品。全国約1700箇所もの自治体に配備される防災無線、その多くが毎日の時報を鳴らす目的で使用されている。私たちは日々、時報を聞きながら、いつかくる災害を恐れ、時に過去の災害を思い出し、郷愁の中で共同体を営んでいる。警報や時報などのメロディ、そして“防災”というフィクションによって仮初の共同体を生み出し、かつてあったこと、これから起こることを再生する。

永田風薫、音楽家、アーティスト。1998年静岡県浜松市生まれ。2021年東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。現在同学大学院映像研究科メディア映像専攻在籍。都市空間に流れる音や音楽を扱った作品制作やエレキギターの演奏を通して、音が持つ社会的な力や政治性について探究している。主な展覧会に、個展「うるわしのハワイ」（Room_412、東京、2021）など。受賞歴に、令和２年度東京藝術大学アカンサス音楽賞受賞。2021年Portrait of Japan グランプリ（アレック・ソス選出）など。

荒牧悠: 一斉に耳を傾け、注意深く聞く防災無線の印象そのままに、あの時あの西日のあのほこりっぽい景色、空気、気分が押し寄せ、不穏さと共に引き込まれていく。あの音響の質感、どうしてそこまで私たちの意識に刷り込まれているのかと感心する。災害がいつ起きるかわからないことに備えること、その備えの転用は、できれば起きずに日常を続けたい、という願いと祈りだと思った。
伊村靖子: 防災無線を模した装置は無骨な印象を与えるが、馴染みの旋律や圧倒的な音響により、次第に私たちの身体的な記憶が呼び覚まされていく。非常時の痛ましい記憶を彷彿とさせるだけでなく、マスメディアや共同体のありようについて思いを巡らせる余地がある作品として評価した。音楽として緻密な構成をもつ作品である。

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F-01

Mid Tide

古澤龍 Ryu Furusawa

映像を連続する静止画として順に連ねると、時間方向を奥行き次元とする立体空間として表現できる。映像再生はこの立体の一断面を前から後ろへ動かす操作だが、本作ではこの単線的な軌道から意図的に逸脱させる。ここで扱う時間は我々が普段体験する時間とは異なる。ここでは被写体の波だけが形と動きを保ち続け、時間を知らせる指標として機能する。波は時間にも空間にも連続するからだ。しかし仮象の時間の流れへと導く存在にもなる。潮汐の変化がいつの間にか風景を一変させるように、本作は見る人の時間と空間の知覚を静かに侵食する。

2010年東京藝術大学絵画科油画専攻卒業、2012年同大学映像研究科メディア映像専攻修了。東京藝術大学芸術情報センターと情報科学芸術大学院大学（IAMAS）で教育研究助手、研究員を経て2018年より東京芸術大学大学院映像研究科博士課程在籍。イメージメディアに対する時間と空間を組み替えるコンピューテーショナルな操作や、イメージ定着プロセス自体へのフィジカルな介在により、見る人の視知覚へ揺らぎをもたらす手法を用いる。このようなアプローチを通じて、かろうじて現れる風景から、視覚メディアの現在性を捉えようとしている。アーティストコレクティブ「ヨフ」としても活動する。

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伊村靖子: 私たちは、最適化されたフレームレートで再生される映像を視聴することに慣れている。一方、本作ではフレームの再生順序や速度などが操作され、再配置されることにより、鑑賞者自らが映像と知覚の関係を探索する余地があるようだ。波は、シンプルかつさまざまな想像を掻き立てるモチーフでもあり、会場で確かめてみたいと感じた。
高尾俊介: 風景の中に本来潜んでいる、時間経過によって変化していく「静」と「動」の印象を混交させ、絵画的な映像作品として画面内で提示している。同時に、映像メディアが保持する時空間情報をピクセルの行列を操作することで、メディアアート以降の自然科学へ向けた新たな眼差しを表明している。

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F-02

unsound dresser : 化粧箱、鳴ラナイ

筒｜tsu-tsu tsu-tsu

撮影：板倉勇人

「ドキュメンタリーアクティング」と題し、演技 = 人が別の人になる過程をメディアとして扱っている。ここでは一連の活動、すなわち、取材、テキストの作成、稽古、演技は同価値であり、それらは不断の変化を見せ続ける。
本作では、富士吉田の繊維産業を支え「織姫」と呼ばれた女性たちを演じた。「織姫」とは、単なる誘い文句だったという。60年前に、ははは、とその場で引き受けたあの人は、今日も織機に向かっているだろう。

撮影：Ryu Ika

ドキュメンタリーアクター。山梨県在住。幼児より修する日本舞踊から得た「筒（つつ）」という身体感覚を手がかりに、演技を用いたプロジェクトを展開する。2022年から山梨県河口湖町にてアーティスト・ラン・レジデンス「6okken」を設立・運営する。近年の活動に「地上」（十和田市現代美術館、2023）、「全体の奉仕者」（ANB Tokyo、2022）「Backflow to the junction」（ニューヨーク、2019）などがある。

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高尾俊介: 山梨県富士吉田市で、繊維業の工場で機織りをしていた「織姫」と呼ばれる女工たち。彼女らを取材をもとに演じながら、同時にその過程を脚色を省いて記録している。過去と現在、記憶とその再現のそれぞれを紡ぎ織るような試みになっている。
吉開菜央: 人の生活史を作品にするとき、話をどのように聞き、思い出し、外在化させるか、その方法とプロセスによって、誰かの語りが自分の血肉になり、作家自身の心身を作り変えてしまうことは多いにあると思います。そうした体験の周辺にある要素全てを含めて展示することは、関わる土地や人々の相互作用によって生まれる渦を起こすための作品でもあるようにも感じ、山梨県富士吉田市でなければ起こり得なかった作品だといえるのではないでしょうか。

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F-03

Nevermore

couch couch

コロナパンデミックが始まった2020年に制作した作品。「地球上の全ての人々が失ってしまったありきたりな日常を、絵筆一本で描き戻す」という寓話的なコンセプトを作品化するために、古くから使われてきた映像合成技術であるクロマキーを援用した。絵筆と映像技術を使って現れたのは、隠れていた元の光景だろうか。それとも別の何ものかだろうか。私たちの目に触れている「現実」における、イメージの力と作用・反作用が立ちあらわれることを目指している。タイトル《Nevermore》は、エドガー・アラン・ポーによる物語詩『大鴉』作中の大鴉の言葉に由来する。
助成：公益財団法人小笠原敏晶記念財団、公益財団法人パブリックリソース財団、横浜市文化芸術活動応援プログラム

作品URL

couch：浅尾怜子・宮﨑大樹によるアーティストデュオ。ものづくりの初源的・発見的方法を検証する作品やプロジェクトを展開する。政治、経済、歴史のような巨大な事象に、個人がアートで働きかける方法を追求している。アートの技法、説話や寓話に連なる現実的背景をもとに、インスタレーションや映像作品を制作する。現在は特に、実証的な現実とものがたりの中間の領域に語らせる方法としてのアートを試みており、ものがたりを語るための装置あるいは空間の可能性を追求している。

作者ウェブサイト

小坂井玲: 絵筆が施される前の椅子やテーブルの輪郭が、黒い服に重なることで視認される。描くことで有を無から生み出すのではなく、かたちは既に存在していたが、一度失われ、それを塗ることで再び現前化させるという行為だと理解されます。最後に現れる「日常」は、かつてあったものと比較する際、質感としては違和感を感じさせる。失われたものは「二度と無い」という事実、その一方で、懐古とは無関係に更新され続ける現実の状況に思いが馳せられます。
山形一生: ニュース番組、YouTube、キッズプレイルームに至るまで、クロマキー合成はあまりにも身近な合成技術となりました。本作は、特定の空間をグリーンバックとして塗り固めた上から、再度本来の色に塗り直すという工程により組織化されます。けどまあ、結局のところそれって表面の色が変わっただけでしょ？ですが、わたしたちは（これが映像作品であるように）表面しか知覚することができません。

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F-04

Mirror#Narcisse

新津亜土華 Adoka Niitsu

一本の水仙の造花が、石のスマートフォンに映しだされる自分の姿を見つめている。浮世絵『今風化粧鏡』と、今日の鏡＝セルフィーが呼応し、ギリシャ神話のナルシスとエーコーを呼び覚ます。急激な社会変化の中で困窮する人々の心を詠んだ短命の小説家・樋口一葉（1872-1896）へのオマージュであり、石灰石に始まるメディアの歴史と変遷への対話を通じて、今日のメディア社会やテクノロジー環境を《ナルシス》と共に鑑みるための “メタ・メディア” インスタレーション。

作品URL

山梨県南アルプス市出身。女子美術大学芸術学科卒、IAMAS（国際情報科学芸術アカデミー）第三期生。多摩美術大学情報デザイン学科、女子美術大学メディアアート学科、東京藝術大学先端芸術表現科での助手勤務を経て、2007年大村文子基金女子美パリ賞を受賞し渡仏。2008年文化庁新進海外芸術家派遣制度にてソウル研修。2012年大木記念美術作家助成基金受賞。近年では、パリ国立高等美術学校パレ・デ・ボザール、ベネトン財団Galerie delle Prigioniでの企画展等に参加。複製イメージ技術のマトリクスを探求し、現代を熟考する作品を発表している。

作者ウェブサイト

荒牧悠: ナルシスは、ずっとずっと自分の姿を見続けている、たとえメディアが変わったとしても、そして石灰石に刻まれたとしても、造花になったとしてもずっとずっと…と思い、切なさと儚さが強化されているように感じた。現代の道具を模した石灰石は、いつかはかつてあった道具の彫刻になる。社会的なつながりの中での己の姿が映し出されることで、どう思い、どう思い続けるのだろう。
小坂井玲: 作品に内在する様々な要素のうち、何が顕然化するかは、鑑賞者によって、そして、展示のあり方によって大きく変化する。ゆかりの作家、樋口一葉の「たけくらべ」に登場する水仙の造花のように、展示において、鑑賞者に多義的な解釈を促す質感や強さが生まれることを願います。

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F-05

閾 | Threshold

宮下恵太 Keita Miyashita

本作品は、壁の中に埋め込まれた身近ながら不可触な存在である電源に焦点を当てたインスタレーション作品である。メカニカルリレー、ACアダプタといった基本的な電気装置によって構成される複数の発振回路による電気的な発振が、スピーカーや白熱電球によって音、光、熱といった知覚可能な現象として表れる。「電源」や「配線」といった、電気を用いる表現において大前提でありながらも透明なものとして扱われてきたものを前景化させ、展示空間や作品の内側と外側を隔てる境界を変容させることを試みた。

作品URL

アーティスト／エンジニア／即興演奏家。1995年北海道生まれ、福岡市在住。電気・情報・通信といった今日的なテクノロジーと人間との関係性を軸に作品制作を行う。主な展示として個展「わたしたちの光、おおらかなしるし | our lights, tolerant signs」（EUREKA、福岡、2024）、グループ展「ICCキッズ・プログラム2022 Tools for Play どうぐをプレイする」（NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、東京、2022）など。

伊村靖子: ミニマルな音響彫刻として受け取るか、私たちを取り巻くインフラストラクチャーの諸条件を可視化するところに焦点を当てているのか、おそらくどちらの解釈も可能な作品であろう。それゆえ、インスタレーションを通して、この作品から何を感じ取ることができるのかを確かめてみたい衝動に駆られた。
小坂井玲: 様々な電化製品が高度化、複雑化して、ブラックボックスとなっていることは、家電が故障した際など、日常において感じることがあるのではないだろうか。その一方で、単純で、透明に感じられる存在であり、電流を供給するという原初的な役割を果たすACアダプターの作品化は、単なる電気的な発振の音と光への変換以上に、多様な意味合いを生じさせ得るもののように感じられます。

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F-06

滑琴狂走曲 in 秋田！（カッキンラプソディー・イン・アキタ）/ KAKKIN Rhapsody in Akita!

おおしまたくろう Takuro Oshima

撮影：伊藤靖史

滑琴狂走曲 in 秋田!は、秋田市内を題材に作曲した「室内道楽」と「雪中演走」の２曲からなる演走イベントである。1年間を通して秋田在住のスケーターや音楽家らの協力を経て滑琴と音響装置を改良し、秋田市文化創造館にステージを設営した。制作当時、館内ではスケーターの敷地利用に対する住民から苦情に端を発し、共存とルール作りに向けた議論が行われていた。そうした社会の摩擦点で、ノイズという異端の在り方をユーモラス＆ジョイフルに提案した。

作品URL

撮影：羽島直志

PLAY A DAYをモットーに、身近なものを改変した楽器の制作と、それらを使った少し不思議なパフォーマンスを行う。音楽や楽器の名を借りた遊びやユーモアにより、社会の不寛容さをマッサージする。音の実験ワークショップ「SOUNDやろうぜ」主宰。近作に車のウィンカーのタイミングのズレを利用したリズムマシン「NB-606」、魂柱を失ったバイオリンを昆虫として蘇らせる「Violinsect」など。

作者ウェブサイト

高尾俊介: 「滑琴」という自作楽器を用いて、サウンドという無形のメディアの原理、制作意図、開発過程を分かりやすく、ときにユーモラスに一般に開示している。参加型アートプロジェクトとしてローカルコミュニティに受容され、都市の街路や環境をもとにサウンドスケープを展開している点が評価に値する。
吉開菜央: 「滑琴」という、スケートボードを改造した楽器で街を走ることで、街の構造そのものを楽譜と捉えて、新しい音楽を生み出す、という発想に惹かれました。試行錯誤の段階ではあるかもしれませんが、長年のライフワークとして続けられているうちに、滑琴の形が様々に進化していること、滑琴走者の輪が広がっていることなど活動そのものも興味深いです。

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O-01

code play/码上演绎

楊慶新（ヨウケイシン） YANG Qingxin

スマートフォンを使って体験するWebサイト形式の演劇です。特定の時間帯に中国人留学生としての「私」が日頃使っているSNSアプリを模倣したページにアクセスできます。それらは既存のアプリを模している一方で、「私」の心身状態を反映しています。フィクショナルながらリアリティを帯びた演劇的な体験を自らの生活に織り交ぜ、SNSを使用する日常的な行為を振り返ります。「私」の上演までそれなりにお待ちください。

作品URL

こんにちは。私は日本で生まれ5歳で中国に戻り高校卒業後に再び日本にやってきた人間です。私は異なる文化のメディアやルールによって形成された個性を持っています。私の思考や感情は無意識に収集した情報から生まれたものです。私は絶え間なく続く内なるドラマの中で生きています。私は同じ経験を繰り返しながら私のパターンに囚われています。

伊村靖子: YouTubeらしき「live」や旧Twitterを思わせる「X」を含む6つのアイコンが画面に表示されるものの、鑑賞者は決められた時間にしかアクセスできない。常時接続社会を相対化する視点に加え、SNS上での行為を「演劇」に見立て、上演時間を設定した点に批評性が読み取れる。鑑賞者がアクセスするシステムを提示したところに、独創性がある。
山形一生: 本作は1日の特定の時間内でのみ閲覧可能なウェブサイトの作品です。わたしたちはインターネットをいつでもどこでも利用可能と経験する一方で、そこには厳密な規制によって閲覧が実現されています。本作の「上演」は、作家個人の視線と生活、経験が現出し、わたしたちの慣れ親しんだ「インターネット」を問うものになるでしょう。

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開催概要

甲府会場小さな蔵の美術館

K-01

Unreal Pareidolia -shadows-

K-02

春 ハイレモンの観察

K-03

Observing Variation / 差異の観測

K-04

I stitch my skin to the ground

K-05

Solarisation / 遭難｜Getting Lost

北杜会場GASBON METABOLISM

上演・上映プログラム

H-01

Hyle(s)

H-02

Round and Round and Round

H-03

Body Memory

H-04

Fire Server

H-05

音楽劇「声のゆくえ」

H-06

愛情★ぼし

H-07

water ripples

H-08

防災無線通信

富士吉田会場FUJIHIMURO

F-01

Mid Tide

F-02

unsound dresser : 化粧箱、鳴ラナイ

F-03

Nevermore

F-04

Mirror#Narcisse

F-05

閾 | Threshold

F-06

滑琴狂走曲 in 秋田！カッキンラプソディー・イン・アキタ/ KAKKIN Rhapsody in Akita!

FabCafe Fuji

F-07

防災無線通信

オンラインこちらの作品はオンライン上での発表となります。

O-01

code play/码上演绎

会場案内

MAP

［甲府会場］小さな蔵の美術館

［北杜会場］GASBON METABOLISM

［富士吉田会場］FUJIHIMURO

［富士吉田会場］FabCafe Fuji

東京からのアクセス

Unreal Pareidolia -shadows-

Scott Allen

作者プロフィール

審査委員コメント

春 ハイレモンの観察

亀井里咲 Risa Kamei

作者プロフィール

審査委員コメント

Observing Variation / 差異の観測

森田明日香 Asuka Morita

作者プロフィール

審査委員コメント

I stitch my skin to the ground

宇佐美奈緒 Nao Usami

作者プロフィール

審査委員コメント

Solarisation / 遭難｜Getting Lost

大岩雄典 Euske Oiwa

作者プロフィール

審査委員コメント

Hyle(s)

大原崇嘉 Takayoshi Ohara

作者プロフィール

審査委員コメント

春　ハイレモンの観察

春　ハイレモンの観察

李姿婷（リシテイ） LEEtzuting

楊慶新（ヨウケイシン） YANG Qingxin